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 2010/01/01
ロボットが人と一緒にコップを洗う日
知能機械情報学専攻 岡田 慧 准教授

「あれっ、いまのは失敗」「でも何かおかしい」
ここまで高めた判断力をテコに、もっと“知”を

 「私たちが目指しているのは、人と一緒に作業をするロボットです」。住んでいる人と一緒になって部屋の掃除をしたり、コップを洗ったり、洗濯ものをたたんだりするロボットが、岡田准教授の目標である。これまでのロボット研究では、掃除など人の作業を肩代わりするアプローチが多かったが、それとは異なる。ロボットがコップを洗っていたら落としてしまった。人なら何気なく拾い上げて洗う動作を、人の動きを観察しながら学んだ知恵を働かせて、拾い上げて洗えるようにしたいのだ。とてもむずかしいテーマに挑戦しているが、「いまでは目の機能や手の機能、コンピュータの能力をリンクさせることによって、“なぜ失敗したか”、“何かがおかしい”といったところまではわかってきました。その知能をさらに加えれば、人が何気なくこなしている動作もできるようになります」。人とロボットがほんとうに共棲する未来社会へ、岡田准教授は確実に近づいている。

人の動作と同じように、何気ない動きも

 取材に訪れた研究室には、三台のロボットがあった。シンクの前に立ったキッチンロボットは、コップを洗おうとしたら、つかみ損ねて外してしまった。失敗したために再チャレンジし、コップをつかむ動作を始める。それは、目になるCCDカメラが周りの状況を観察し、コップをつかもうとするセンサーのついた手の動きをつぶさに確認しているからで、失敗したプロセスを考えながら、コップをつかんで洗うまでやり直す。また、お茶を湯呑に注ぐロボットも、湯呑に手を延ばそうとしたとき、人が意地悪をして遠ざけると、「何かおかしい」と気づいてもう一度やり直す。いずれのロボットも、なぜ失敗したかを判断できるので、成功するまで何回も同じ動きを繰り返す。そこまでは可能になったのだが、問題はその先。「“どうしたら回復できるか”はまだできていないのです」

 従来は、ロボットが作業に失敗したら、回復の仕方を人がプログラムで指示していた。それによって、確かに回復はする。しかし、きょう10回失敗したが、あしたは8回に減るかというと減らない。同じ10回の失敗を繰り返す。失敗を学んで回復できるようにはプログラムされていないからだ。それを克服するために、岡田准教授は「人の動作から学ぶ、あるいは、人に教えてもらう」手法を取り入れようとしている。

 コップをつかもうとしたロボットの手を「それを取っちゃダメ」と人が邪魔をすると、ロボットは再度、つかみにいくが、何回かその動作の邪魔をすると、「それを取っちゃいけないんだ」とロボットが体で覚える。つまり、人が手を握ったり体に触ったり、話しかけた人のほうに顔を向けるとか、ロボットが人の動きを学んで反応するようにしておくと、言うまでもなく賢くなる。その司令塔となるコンピュータと作業の中身のソフトウェアを組み合わせることによって、キッチンロボットも湯を注ぐロボットも、従来のロボットを超える学習能力を備えることができたのである。

 2個のCCDカメラで距離を測り、指先で細かく動いているものを見るCCDカメラ、横から来た人もわかるように、180度周りを見渡せるカメラなど5個を装着して、目の機能を高度なものにし、指先のセンサーも工夫している。音声認識用のマイクもついているので、誰がどの方向から話しかけてきたかをキャッチできる。まさに、人と同様の作業をできるようにするためである。

コップをつかむだけでなく、布をたたむロボット

 現在、特に力を入れているのは、コップや湯呑など堅いものをハンドリングするだけでなく、布などの柔らかいものを扱うロボットだ。布はつまみあげたら、どういう形になるかまったくわからない、とても難解な研究である。その目的を問うと、「床に落ちているタオルを拾って洗濯機に入れ、スイッチを押して洗った後、洗濯機から取り出して広げてたたむ、こうした一連の動作を実現したいのです」。このロボットには3本指の先端にセンサーがついていて、指先で布の厚さを測り、つまむ力をコントロールして、5個のCCDの目で追いかけながら、広げてたたむ作業を目指している。

 この3台のロボットの特徴は、作業内容はちがうので、指先のセンサー機能が異なるのは当然だが、使っているソフトウェアは同じもの。「タスクごとに専用のソフトウェアを用意するというのでは、広がりがないでしょう」。部屋の中の作業なら1つのソフトウェアでそこそこの作業ができる、そんな汎用性を狙っているのである。

 岡田准教授が志向している研究の視点は、とてもユニークである。「ロボットにとって、人が邪魔になってはいけないんです」。人が側にいるだけでは、手伝ってくれているのか、何かをやってほしいと思っているのかわからない。それではロボットは戸惑ってしまう。人が来たら一緒に洗ったり、人が途中で中断した掃除を引き継いでやるとか、誰もいなければ決められた作業をこなす、そうした環境にマッチしたロボットをつくりたいのだ。そのために、目の機能、手の機能などを、あらゆる角度からタスクに応じて研究し、食器洗いに応用してみる。その結果、新たに見えた課題を解決して布をたたむ用途に展開する。つまり、基本となる手の機能を見いだすと、それをコア技術として磨きをかけて次の用途に応用する。こうした積み重ねが、人が教えなくても『失敗したようだ』『何かがおかしい』と判断できるまで知を高めることができた理由である。この方向をベースに、自ら問題を解決する道につなげる。

 京大の情報工学の出身である岡田准教授。コンピュータを操るのが好きだったが、あるとき、自分で書いたプログラムでロボットが動いた。「おもしろい」と感動して研究の目がロボットに移る。「機械の研究は一度も経験しないままですが、知能ロボットの研究はホント飽きないし、ワクワクしますね。家庭用をターゲットにしたロボット研究は、競争のまっただ中。食器洗いロボットなどは、そんなに簡単に社会に入らないよという意見があるのも確かです。いまが最も暗い、夜明け前かもしれませんが、特定の用途に注目すれば実用の突破口が一気に開かれます」。ロボットを取り巻く学生たちの声がそれを後押しするかのように弾んだ。

岡田慧 准教授



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