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 2009/01/01
情報ディペンダビリティで産業を変える
電子情報学専攻 坂井修一 教授

理系と文系の知恵で社会情報インフラの構築へ
ポスト・ディペンダビリティを視野に次世代の構想も

坂井修一 教授 「情報産業界を通じて真の豊かさを実現するための基礎を築く」という情報理工学の役割を果たすために、学問と産業構造のパラダイムシフトを成し遂げたい―。坂井教授がそのために目指しているのは、“超ディペンダブル”という土台の上に、新しい社会情報インフラをつくり上げることである。日本発のそのインフラを、これまでのような技術屋だけの価値観だけでなく、文化的な価値観と一体化して開発し、産業界を新しい形に変えて人々を幸せにしたいと強調する。その先には、さらに遠大な『文化創造情報処理システム』というシナリオを描き、これによって10年後、20年後の産業界をリードする核に据えようとしている。「それこそ、まだ夢の構想段階ですが…」と言いながらも、研究集大成への意欲をにじませる。

情報システムは生命に密着したライフライン

 大学の知恵が産業を興した例は枚挙にいとまがない。コンピュータの黎明期に歴史的な役割を果たしたENIACは、ペンシルベニア大学院生のエッカートとモークリーが、OSで世界を席巻したウインドウズはハーバード大学のビル・ゲイツらが開発した。日本でもビタミンB1、グルタミン酸ソーダ、KS鋼など、大学が見いだしたタネで産業を興し、社会を便利に、人々を幸せにした。しかし、急拡大した20世紀の世界の産業界は、一方で大量生産、大量消費、大量廃棄という負の遺産を遺した。「昨今よく言われることですが、自然からモノをつくり、再生可能でないものに変えていくこれまでのサイクルを繰り返す限り、地球は滅びゆくしかない。そうならない方向に社会を、経済を、産業を回すようにカジを切るしかないのです」。20世紀とは異なる価値観で21世紀を生きていくには、新たなシナリオを発信するしかない。坂井教授は情報インフラによって産業のパラダイムシフトを実現しようとしている。

パラダイムシフト
パラダイムシフト

 坂井教授はコンピュータ・アーキテクチャの研究者である。コンピュータ・アーキテクチャは、どのような命令セット、機能を持ち、どのような規模で、どのような制御を行うのか、「情報」と「物理」の境界領域に位置する。情報処理システムの本質に直接触れる研究領域で、最近はここにディペンダブルという視点を盛り込み、信頼性・安全性とセキュリティを統合したディペンダビリティと、従来からの要請である高速化、省電力化をすべて成り立たせる統合技術の研究にベクトルを合わせている。

 情報システムのディペンダビリティが重視されるのは、情報システムが私たちの生命や財産に直結したライフラインとなっているからだ。金融、発券システムなどで発生した障害によって、私たちは多大な損害を被った。システムのディペンダビリティを確保する対策としては、故障や攻撃の発生を予防する「回避」、その数や程度を減少させる「除去」、故障などが生じても正しいサービスを提供する「耐性」がある。それを可能にするには、プロセッサ、OS、アプリケーションの各レベルで個別に取り組み、それらを統合システムとして検証する必要がある。

超ディペンダブルプロセッサ・テストベッド 超ディペンダブルプロセッサ
超ディペンダブルプロセッサ・テストベッド 超ディペンダブルプロセッサ
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 坂井教授が取り上げたのは、情報システムの土台となるプロセッサの構成自体をディペンダブルなものにする研究である。ソフトエラー、タイミングエラーを防ぐとともに、一部の回路が壊れても、故障個所を迂回して動的に回路をつくり直すアーキテクチャを構築した。また、回路が壊れるよりも、データが読み出されたり、改ざんされたりする被害を防止することも大きな課題で、プロセッサ1つでトータルに解決する超ディペンダブル・プロセッサを開発している。2002年から5年計画(JSTのCREST)で、OS、アプリケーションの専門家と分担協力して実現した。これを受けて2007年から5年計画で、設計にミスがあったとしてもアーキテクチャの工夫で正常に動作するように、階層的なチェックによって信頼性を高める超ディペンダブルVLSI研究を新しいCRESTで実施中である。

人間に幸せをもたらすシステムをつくる

坂井修一 教授

 これらがディペンダブル・コンピュータシステムに結びつくのは間違いないが、坂井教授はすでに“ポスト・ディペンダブル情報処理”に目を向けている。「安心・安全の次にくるものは何か」という観点から用意した回答が「人間の幸せを支えるコンピュータシステム」である。ほぼ100%安全につくられているはずなのに、なぜか安心できないことがある。そこで、安心・安全かつ幸せをもたらすシステムを探っていく考えだ。具体的に目指すシステムは、「人格的欲求を満たすような知的コミュニティを構成する情報処理システム」である。ここでいう知的コミュニティは、wwwのようなネットワークDB型で、内部矛盾や対立問題を積極的に扱い、制約充足型で最適に処理するような形で問題を解決する情報処理システムを想定している。それを技術系と文化的な知恵を融合してつくり上げた新しいアーキテクチャやソフトウェアによって実現したいと言う。価値観も産業万能主義から人間中心主義へと変え、大衆娯楽に偏重しているコンテンツを教養のあるものにする。こうして構築した情報インフラによって産業構造のパラダイムシフトを図りたいのだ。

 将来、手がけたいと描いているのが『文化創造情報処理システム』である。超分散型情報ネットワーク、ネットワーク型教養ベース&感性を含む情報処理などをもとにしたものだ。「これは、私の中にある理系と文系の資質を統合して実現したいと考えているものです」。研究を離れると、坂井教授は「短歌」を詠む。キャリアは30年を超え、歌集も出している。コンピュータの研究者が短歌の世界で権威のある「若山牧水賞」を受賞(2006年度。第11回)しているのも、これまでに例がない。この文系の資質が“文化創造”という視点を浮き彫りにしたのかもしれない。「安心、安全の研究だけで研究者生活は終わるかもしれませんが」と笑うが、将来の情報システムの道筋だけでも、次代を引き継ぐ若い研究者に示しておきたいという情報理工学系研究者の心が、夢のシステムには込められているようだ。

坂井教授



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