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 2008/12/15
アートの世界に科学を組み入れ、未体験映像を演出
システム情報学専攻 アルバロ・カシネリ 助教

五感と新たに獲得した感覚で人間の感性広げる
独自発想の映像コンテンツを医学などに応用へ

アルバロ・カシネリ 助教 「メディアアーティストと呼ばれるよりも、サイエンティストと呼ばれたい」―。アルバロ助教はこのように自己表現をする。あらかじめ撮影した映像を手で触ると、まったく違った、別の映像の世界を体感できる手法が内外で高く評価されて以来、付けられた冠がメディアアーティスト。この手法は、アートと科学の間に橋を架けて両者の壁を取り払い、新しいジャンルの研究領域『メタ・パーセプション』を具体化させる第一歩となるもの。夢は、多くの人を感動させる広範なアプリケーションをサイエンティストの目で用意することだという。日本(システム情報学の石川研究室)での研究生活はすでに6年余。夢はどこまで実現しつつあるのだろうか。

ウエアラブルなコンピュータデバイスも

 メタ・パーセプション。人間や機械が扱えないとされてきた新しい感覚や情報を付加して、人間の持つ五感を一段と拡張しようという、これまでにない研究領域である。石川研究室が推進する4本柱の1つで、この研究の担い手がアルバロ助教である。

 ウルグアイ出身でフランス育ち。20代のはじめ、在日フランス大使館で説明を受けた日本の科学技術が強い印象とともに焼きついた。フランスの大学の博士指導教員と石川正俊教授は研究交流があり、石川研究室が展開していた光をはじめとする多彩な研究に惹かれ、ポスドクとして研究室に入った。最初は光コンピューティングを手がけたが、レーザーなどの光学技術に加え、コンピュータサイエンス、人工知能、画像処理といったフランスの大学で修めた知識をもとに、新しいシステム研究に軸足を移す。第一弾がスマートレーザースキャナーだ。レーザーの光を動いている手や指に当てることによって、手などの3次元の座標を得ることができる。加えて、光計測により得られる距離情報を触覚情報に変換して提示するハプティックレーダーも彼の発案だ。

クロノスプロジェクターの原理
クロノスプロジェクターの原理
時間ごとに変わる映像を蓄積し、
見る人が押したところだけ時間の
違う映像を映し出すことによって、
不思議な映像を表現している

 次に開発したクロノスプロジェクターが、メディアアーティストと称されるきっかけとなった。「感覚というものをいかに表現するかを具体化した」もので、前もって柔らかい、手で触れる伸縮性のあるスクリーンに、多いものでは1000枚以上もの映像コンテンツを埋め込んでおく。その映像を手で押してスクリーンを揺らしたり、歪ませたりすると、押す深さや時間によって、同じ映像の未来や過去の映像に変化させられる。石川研究室が開発したリアルタイムで動きを認識できる「ビジョンチップ」と映像コンテンツをドッキングすることによって、不思議な映像を表現することに成功した。スクリーンを押す力や時間は人によって異なるので、まさに、その人オリジナルの未体験ゾーンの映像を楽しめる。このクロノスプロジェクターが文化庁メディア芸術祭のアート部門大賞に選ばれた(2005年度第9回)ほか、海外から招待講演や招待展示が多数舞い込むなど、高い評価を受けた。

 このようなアルバロ助教の感性に注目した石川教授は、ヒューマンコンピュータインタラクションやメディアアートなどを広く扱う学際的な研究領域『メタ・パーセプション』の開拓者に指名した。スマートレーザースキャナーはその後、レーザーで文字を書いたり、書いてある文字を読み出せるシステムに結びつけた。レーザーの機能を拡張して利用するおもしろさを次々に打ち出しており、レーザー光源とレーザーの光をスキャンするミラーなどの部品を1チップ上に微細化して集積すると、コンパクトな3次元入力デバイスにもなる発展性を秘めている。ウエアラブルのコンピュータデバイスとするために、あらゆる可能性を追求しているところだ。

スマートレーザースキャナー
スマートレーザースキャナー
レーザーで指先をトラッキングすることにより、
3次元位置情報を高速に検出する装置。
右の箱の中に2次元ミラー、レーザー、光検出器がある

ボリュームスライシングディスプレイのイメージ(アルバロ助教のスケッチ)
ボリュームスライシングディスプレイのイメージ(アルバロ助教のスケッチ)
3次元データの任意の断層像をプロジェクターから厚紙に投影して表現している。
厚紙の位置の計測がカギ
 また、クロノスプロジェクターから派生して、新しい技術が生まれている。今度は、自分で動かせる厚紙のような平面に3次元対象の断層像が自由に映るようにした。たとえば、人体を輪切りにしたCTやMRI画像情報を蓄積しておくと、胃の部分を見たいときには、厚紙をそこへ持っていけば厚紙の位置に応じたスライス映像が得られる。これもまた不思議な感覚で、複雑な人体の断面像を任意の角度で切り、病気に侵された個所を探索・表示できることから、外科手術練習用インタフェースの基礎技術になり得る。メディアアーティストというよりも、サイエンティストとしての視点が色濃く映し出されているのがわかる。内外で行った招待講演や展示会の反響は大きく、「液体があたかもそこにあるかのように感じられたら、あるいは、存在しない紐を引っ張るような感覚を表現できたら、新たなサプライズを演出できるのではないか」といった声が寄せられたと言う。近く広告や映画などへの応用が始まる―そんな予感がする。

国内はもとより、海外からも熱い視線

 いままで見たことのない映像を“創造”したアルバロ助教に対し、海外のメディアアートを研究している大学やマイクロメカトロニクス関連の研究機関からヘッドハンティングの話が持ち込まれたそうだ。他の研究室や海外の大学などで行われている研究について知りたいし、興味はあるとしながらも、アルバロ・カシネリ 助教「メタ・パーセプションの奥は深く、私が思い描くアプリケーションはまだ完成していません。アートの中に科学を取り込んで、多くの人が感嘆し、楽しめるような未来システムをつくりたい。その夢はしだいに形になりつつあるので、研究室の仲間と協同作業で仕上げる」と強調する。「こんなのはどうです」と披露したのは、カメラを覗きながら撮影している自分自身を、別のカメラで覗き見るような手法。ユニークな感性の持ち主である。

 この手法を真似て、将来のアルバロ像を俯瞰してもらうと「企業の研究者という選択肢はありません。大学や研究機関で研究や指導活動を行っているでしょう。それが東大であれば最も望ましい。そうでなくても、何らかの形で東大と連携した関係をつくっていたい。ただ、その方程式にはたくさんの変数があるでしょうね」。未知の変数が多すぎて将来は予測しがたいが、東大を中心に据えていることだけは確かのようだ。

石川・小室研究室



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