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 2008/02/01
特殊技能がなくても使える汎用の自動チューニング技術を
コンピュータ科学専攻 須田礼仁(れいじ)准教授

次世代HPCの「超低消費電力化」などで真価を問う
情報の効率的検索はじめ多彩な用途開拓を視野に

須田礼仁(れいじ)准教授 計算機やアーキテクチャーの高度な性能を引き出す『チューニング』。効率的に計算すれば課金も少ないし、スピードを犠牲にしても精度だけは確保したいといったことなどを可能にする手法。活躍の場は広いが、使いこなすには特殊技能が要る。須田准教授の目的は、特殊技能を持っていなくても、自動チューニングプログラムを書ける汎用技術の確立にある。現在は10年後を見据えた次世代のULP−HPC(超低消費電力の高性能計算機)開発プロジェクトに参加し、“超低消費電力”というキーワードを自動チューニング技術で実現することを目指している。HPCの代表、スーパーコンピューターが低消費電力化されれば、デスクサイドPC並みに小型軽量になり、幅広い層の研究者が利用する環境が整う。ライフサイエンス、ナノ、材料、気象、航空・宇宙といった、日本にとって欠かせない次世代研究がいっそう活発化する。須田准教授が進める誰でも使える自動チューニング技術は、重要なミッションを担っている。

目標1000倍のうち、少なくとも10倍達成へ

 日本のスパコンが世界の頂点に立った例がある。2002年に稼働した地球シミュレータだ。ピーク性能40テラフロップスは、当時世界で最も速かった。このスパコンがスパコン王国・米国を刺激し、開発競争に火をつけた。地球シミュレータは2年間、トップの座を維持したが、いまでは世界のスパコン性能ランキングの30位。2005年に東工大の松岡聡教授グループが開発した「TSUBAME」も、登場時には世界7位をキープしたものの、16位に後退している。スパコンは世界的にスピード競争真っただ中。日本は世界トップ返り咲きを狙って、理化学研究所が2012年稼働時点で世界最速の次世代スパコン開発を国家プロジェクトで進めている。性能はテラ(10の12乗)の10000倍の「10ペタ(京速)」フロップス級。スパコンは初めて「10ペタ」領域に踏み込むが、米国企業も「10ペタ」級に照準を合わせ、開発にしのぎを削っている。

CREST プロジェクトの全体像
CREST プロジェクトの全体像
※画面をクリックすると、拡大画像をご覧になれます
 スパコンが高速性を発揮できたのは、CPUにエネルギー(電気)をふんだんに投入してきた結果である。しかし、このまま電力を投入する方法を踏襲すると、CPUから出てくる熱でCPUが機能しなくなる可能性が高い。電気を使わずにすべて光で駆動する方法などが検討されているが、消費電力を減らしても高速性を維持する、性能電力効率を高めるULP−HPCプロジェクトが浮上した。国内最高性能のTSUBAMEの消費電力は1メガワット。これを1000倍の効率、言い換えれば、消費電力を1000分の1に減らす作戦だ。省電力化で小型になると、一部研究者にとどまっているHPCの利用層が一挙に広がり、科学技術進歩の大きなトリガーになる。

 このプロジェクトはJSTのCRESTの一環。今年度から始まった。リーダーは東工大の松岡教授。東工大・松岡グループ、東大(須田グループ、片桐孝洋特任准教授、黒田久泰助教)、東工大、電気通信大、NII、東海大が加わり、ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーション&アルゴリズム、アクセラレーターなど要素技術の分担開発に着手している。

ベイズ理論や新しい記述方式を駆使

 須田グループの受け持ちは、アーキテクチャーに応じてプログラム自体がパラメーターなどを適切に設定したり、複数の候補の中から適当なものを選択できる仕組みを組み込んだ、自動チューニング機構を持つプログラムの開発。これによって「1000倍のうちの10倍くらいは貢献したい」という。研究の視点は、たとえば、フルパワーで演算処理する部分と後で処理してもいい部分を明確に切り分けたり、CPUのクロックの上げ下げ、CPUとメモリーの切り替えなどで生じる電力の無駄をチューニングによって省くのだ。そのために、切り口を主に3つに絞っている。

自動チューニングのための数理基盤 ABCLibScript の全体構想
自動チューニングのための数理基盤 ABCLibScript の全体構想
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 省電力を目的とした自動チューニングのための数理は、須田准教授がベイズ統計に基づく逐次実験計画法を発展させ、システムの電力を測定し、電力効率を最適に保つ手法を採り入れる。ここに自ら構築した、ベイズ理論を駆使して質のよい解を与える近似解法を持ち込む。そのサンプルとして注目したのは、狭い範囲ながら高速効率処理ができるグラフィックス用デバイス。通常のCPUと単純比較すると性能電力効率が10倍くらい高い。このデバイスの特徴をCPUに取り込むことで低電力化し、ベイズ理論を使って設定したモデルと電力測定結果を比較、修正を繰り返して最適なチューニングポイントを選ぶことにしている。須田准教授は、もともとベイズ理論研究とは縁がなかったが、自動チューニングのために研究を始めた。「半年くらいは右往左往の状態」だったが、効率的な実装が得られる近似解法を見いだす。

須田礼仁(れいじ)准教授 プログラミング手法については、片桐特任准教授が提案した既存プログラムに容易に自動チューニング機能を付加する記述方式(ABCLibScript)に、須田アイデアによる省電力機能をドッキングして高度化し、既存のプログラムを省電力用に仕上げる予定だ。「この記述方式はとても優れており、パラメーターの種類、範囲を設定することによって低電力化を実現したい」。3つ目のソフトウェアチューニングについては、実際のハードウェアにプログラムを実装し、低電力の魅力を備えたソフトウェアを開発する計画だ。

 須田准教授の自動チューニング研究は、HPCの低消費電力というテーマに限定したものではない。新しい計算機が登場すると、それに適した形にプログラムを書き改める必要がある。また、限られたコンピューターメモリーをもっと有効かつ効率的に使いたいとか、情報の効率的な収集、さらには高速化、効率化など、個別ニーズに対するチューニング技術など広範にわたる。そのために、2003年から東大、電気通信大、名古屋大と企業研究者も加わった自動チューニング研究会を立ち上げた。自動チューニングに的を絞って研究活動をしているグループは珍しく、この研究会から新しいチューニング技術が登場する期待もある。特殊技能のプログラマーの知識がなくても、簡単にプログラムが書けるような汎用チューニング技術は、今後の科学技術の発展に不可欠なものだけに実現が待たれる。

須田研究室



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