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 2007/12/01
日本発の実用的な数値計算公式の確立を急ぐ
数理情報学専攻 松尾宇泰(たかやす)准教授

『構造保存型数値解法』という発想をもとに展開
数値シミュレーションの信頼性向上、適用拡大へ

松尾 宇泰(たかやす)准教授 いままでの計算式では解けなかった問題が解ける数値計算公式ができると、数値シミュレーションの適用の幅が広がり、自然科学の研究に計り知れない進展をもたらす可能性がある。数理情報学専攻の松尾准教授が見いだした『構造保存型数値解法』という方法は、まさに、それに適ったものだ。現在、この公式で試みているのは超伝導現象の解読。超伝導の“エネルギー”をキーワードに、時間とともに下がっていくエネルギーの下がり方を“保存する”という発想のもとに、高度な偏微分方程式で正しい解が出せる見通しをつけた。世界を見渡しても、偏微分方程式に対する構造保存型数値解法にトライしている研究者は少ない。松尾准教授は、この先端的な研究をさらに高度化し、日本発の実用的な数値計算公式として確立を急ぐ。

自然科学の研究進展に計り知れない貢献

 どのような問題も解ける万能な計算公式があれば理想的だが、それはないものねだりだ。これまでは常微分方程式を対象に、問題に適した解法を使って結果を導き出す研究がなされていたが、常微分方程式よりも一段上を行く偏微分方程式を駆使する方向が潮流になりつつある。2つのちがいはどこにあるのか。常微分方程式では、ロボットなど力学系の運動を解析するのに1つの座標に注目して、それがどのように動くかを見るのに対し、偏微分方程式では、1点ではなく無数の点の情報に注目する。つまり、モノを有限個として扱うものには常微分方程式が、無限個をみる場合は偏微分方程式が適しており、無限個を扱う分だけ偏微分方程式のほうがむずかしい。

 偏微分方程式は、一般的に流体や重力場、電磁場など『場』に関する自然現象を記述するのに使われている。具体的には、フライトシミュレーション、コンピューターグラフィックス、天気予報などから計量経済学まで幅広い。松尾准教授は1990年代後半から偏微分方程式に注目し、数値解析学、特にGeometric Integration(構造保存型数値解法)による新しい数値計算公式の構築を目指している。ある種の物理的な構造を保存するように答えを出すことを目的に、その構造に潜んでいる数理を発掘し、それを数式として記述して計算する手法である。

数値解析学はシミュレーション時代の基礎技術
数値解析学はシミュレーション時代の基礎技術
たとえば、物理学はかつては「理論」と「実験」が
相互補完していたが、現在は第3の柱「計算物理」が
重要で、その基礎技術として数値解析が欠かせない
※画面をクリックすると、拡大画像をご覧になれます
 例題に選んだ超伝導現象の解には、エネルギーをキーワードに迫っている。超伝導現象では時間の経過とともにエネルギーが下がっていく。たとえば、常伝導から徐々に超伝導になるのを調べたいとき、最初と終わりの状態はよくわかっているが、中間がどうなっているかは数値計算しなければ分からない。このときエネルギーが下がるプロセスも含めて説明できるのがのぞましい。

 超伝導体で円盤をつくったとしよう。全面すべてが超伝導になっているとは限らず、一部は超伝導だが、残りは常伝導のままということもあり得る。方程式を面内の1点ごとに細かく記述し、高速計算機を繰り返し稼働させれば、超伝導と常伝導の分布状況を知ることはできた。しかし、これでは計算コスト、時間などからみて適切な方法とはいえない。また、超伝導現象を偏微分方程式で解けることも知られていたが、きれいに解くことができなかった。松尾准教授は連続的なエネルギーの下がり具合の変化を、離散化してもうまく保てるように計算する手法を見いだした。ポイントになったのは、物理現象の中にもともとあって、見過ごされていた数理(情報)を見つけ出し、方程式として記述する視点を持ち込んだ点だ。これにより、実験によって得られる超伝導のパターンに近い結果が数値シミュレーションで得られる道を拓いた。「いまは紙の上(2次元)のレベルですが、2007年度内に計算機に実装する作業を始めます。実際に実行してみて、計算コストの確認、実験結果との比較などを行うことになりますが、これまでの方法より確実に優れた計算公式になるはずです」。これをベースに3次元の現象を解く解法としてレベルアップしていく。

水の波は、時として「とんがった」波=peakon になることが知られている。
下の図は大きな三角波が、たくさんの peakonに
分解していく様子をシミュレーションしたもの
新開発の構造保存型解法では
波が正しく分解されていく
従来の解法によると、誤った計算に
より水のエネルギーが失われ、peakonが
生まれる前に波はつぶれて消えてしまう

地球丸ごと気象予測シミュレーションも視野に

松尾 宇泰(たかやす)准教授

 この解法はきわめて汎用性が高いのが特徴だ。水と油を混ぜたとき、時間が経つと水と油に分離して成長していく『相分離』現象や、光ファイバー中を光パルスがどのように伝播するかという『ソリトン解』についてもきちんと説明できる。また、力学系の問題にしても、たとえば、地球の周りを月が一定の軌道で回っているが、昔の方式で計算すると、月の軌道がずれて地球に近づいてくることになってしまうという難点があった。エネルギー保存則の考え方に立てば、実態にそぐわない解ではなく、正しい物理現象に基づいた解が得られることになる。

 「まだ、はっきりした将来目標ではありませんが、気象予測にチャレンジしたい」。日本を覆うような限られた気象空間ではなく、地球を丸ごと数値シミュレーションする動きが出始めている。ここに空気の渦の持つエネルギーなど大気中のエネルギーをパラメーターとして取り込めば、精度の高い気象予測が可能な地球丸ごとシミュレーションにつなげられるかもしれない。エネルギーの質が超伝導とは大きく異なるが、記述する方程式は手中にあり、未開拓の領域を攻める素地はあるのだ。

 松尾准教授は東大物理工学の出身で、物理から数理に転身したキャリアの持ち主。工学部で行った物理実験が超伝導現象を数理で解く動機になった。「数理は、物理に興味があっても、数学や計算機に興味があっても入ってこられます。でも、それでよい仕事ができるかというと、必ずしもそうではないですね。複眼的な視野が必要です」と次代を担う若者に体験を通した注文を出す。数値シミュレーションは現代科学を支える基盤であり、その中核をなす数値解析研究で日本は世界の拠点の1つになりつつある。それだけに、自らは3次元現象をリアルに解く構造保存型数値解法の早期実用化を目指し、研究をリードしていく考えだ。

松尾准教授
数理情報第3研究室



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