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 2007/11/15
大規模・複雑系を料理するシステム設計論の構築へ
システム情報学専攻 原 辰次(しんじ)教授

群ロボットの制御や生命現象の解明に生かす
「モノとモノ」がつくり出す「コト(機能)」ベースに

原 辰次(しんじ)教授 「制御理論」×「バスケットボール」―何の関係もなさそうだが、実は密接にかかわっている。その心は、バスケット歴40年の原教授に解き明かしてもらうことにするが、制御理論・制御技術は、自動車、ロボットや生体系をはじめ、通信、金融、社会システムなどあらゆる分野に浸透し、もはや制御なしには語れない。しかも、これらのシステムは複雑・大規模化しており、その解析や設計には、普遍性の高いシステム制御理論が欠かせなくなっている。そのために、「モノとモノ」がつくり出す「機能(コト)」に立脚したシステム制御理論を構築することにより統一的な設計法を開発し、世界に通じる設計ツールを提供する。これを通して、21世紀の社会システムが抱える課題解決を目指す―これが原構想である。制御とスポーツの関係も、決して無縁ではないのだ。

制御理論は各学問共通のプラットフォーム

 制御技術は、「モノ」を望みどおりに動かす機能を実現する手段である。電気、機械、化学などの境界領域を融合して進める学際とは異なり、学問領域の横ぐしを刺すプラットフォームである。多彩な社会システムを扱うだけに、個別の課題に対応した解決法が他の課題に有効とは限らない。本質を捉えた普遍的な方法論の確立が求められるのもこのためで、異分野の融合だけにとどまらない“知の統合”が必要だ。ここに原教授は横断型基幹(横幹)科学技術の視点を盛り込んでいる。

図1 横断型基幹科学技術のアプローチ
図1 横断型基幹科学技術のアプローチ
図2 フィードバック制御系のイメージ
図2 フィードバック制御系のイメージ

 横幹科学技術は、「モノ」を中心に学問分野を形成してきた従来の多くの縦型科学技術と異なる学問領域である。モノ(対象)に依存しない普遍性の追求を目的とし、コト(機能・働き)に目線を置いたもので、制御、計測、統計、情報、数理、デザインなど43もの関連学会が連携して5年前に立ち上げた。原教授は仕掛け人の一人だ。

 普遍的な方法論を確立するという発想はどのようなものか。砕いて言えば、普遍的な原理を確立する(コトの本質を表す特徴付けを行う)ことと、実際のシステムの解析や設計に役に立つ有効な計算法を提供すること。「制御はいわばコトの代表。横幹の考え方に立って普遍的な方法論をつくれば、それを通して電気系とバイオ系など異なる領域の研究者が議論できる場ができるんです」。美しい理論で構築されていれば、ソフトウェアへの展開がしやすい。それが実際のシステム設計に生かされてはじめて役に立つのだから、設計する人に理解できるようにツールも提供したいという狙いからである。

 具体的な例で検討してみよう。20台のロボットに1時間以内にこの海岸の掃除をせよという指令が出された。ロボットに与えられた指令は「この海岸の掃除」だけ。あとはロボットが自分で判断して行動する。1ヵ所に集まりすぎても離れすぎても、効率的に掃除ができない。そこで、各ロボットは近くにいるロボットと情報交換しながら掃除をしていく。この制御論が確立すると、災害時の救助活動などに応用できる。「一般化周波数変数をもつ動的システム論」という新しい枠組みでその可能性を見いだしているが、一般化KYP補題(IEEE 制御部門の最優秀論文賞を昨年受賞)が大きな役割を果たすという。

 また生体系では、最小単位の細胞から、いくつかが集まって組織になり器官になっていくように全体を階層システムとして扱える。一見、ツリー構造に見えるが、通常のものとはダイナミズムが違う。遺伝子レベルでは早い動きをしているが、細胞レベル、器官レベルになるにしたがって緩やかな動きになる。それをうまく表現するために、原教授は多分解能動的システム論の研究を提唱した。従来は信号の分解能のみに注目していたが、「動的システムの分解能を考慮することによって、人間やネットワークを含む大規模・複雑化システムに対応した制御が可能になると思いますね」。この研究は始まったばかりだ。

設計ツールを提供してこそ、実世界に貢献できる

原 辰次(しんじ)教授 もう一つ、フィードバック系の制御の例だ。[図2]のように『対象』をいろいろなものに当てはめるとおもしろい。制御器を教師に、対象を学生に置き換えると、この制御系は教育システムに早や変わりだ。対象をロボットにすると、優れたセンサー・アクチュエーターに頭脳に当たるコントローラーをうまく組み合わせると、望みの機能が実現できる。つまり、理論がきちんと組み立てられていれば、応用展開は広いことを示している。さらに、量子の世界で有名な「電子の位置と運動量を同時に精度よく知ることはできない」ことを表したハイゼンベルクの不等式を、制御理論で培った数学を駆使して展開する試みも行っている。その中で「量子系が不安定になると、測定効率に応じてその度合いが大きくなっていく」という物理の視点からは得ることができない結果を導き出している。

 設計ツールについては、仲間の研究者と共同開発した、ロボットなどのデジタル制御に使うサンプル値制御系設計ツールボックスや、産学連携で開発中の数値計算と数式処理をハイブリッド化した設計ツールなどがある。世界に通用するオリジナルツールを提供したいという目標を具体化させたもので、実際に制御系システムの設計に使われ、高い評価を得ている。

 原教授は、東京工業大学の制御工学出身。学科選択の理由は、電気と機械の中間で「何かおもしろそう」という程度であったが、3年次に「制御理論に触れて、制御が物事の本筋になる」ことを意識したそうだ。以来、制御のレールに乗った研究人生である。バスケットとのかかわりは中学時代から。東工大ではコーチも務めた。バスケットは戦い終わった段階で1点差以上で勝つゲーム。野球やサッカーでも同じなのだが、バスケットはダイナミックさが違うし、制御理論が適用できる点でも違う。終端時刻固定の制御、つまり、勝負が決まるときから逆時間で解く最適戦略がカギを握るというのだ。最後に1点差で勝つには、1分前にどういう状況をつくっておくか、3分前、10分前にも、勝つための作戦パターンをいくつも想定し、時間と点差の流れを追って実行していく、制御理論を駆使する戦略性の高いゲームである。「制御理論でバスケットをやっている人は、他にはいないでしょう。定年になったら、制御とバスケの本でも書きたいですね」と笑う。その前に、美しい制御理論を構築する仕事が待っている。この逆時間設定問題を解くカギは、原教授の胸中にある…。

原教授
原・津村研究室



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