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 2007/06/01
チャレンジの合言葉は、“世界一”
創造情報学専攻 稲葉真理 准教授

日米欧3万km、10Gbpsでデータ転送時代拓く
ペタフロップス級の超高速計算機システムにもメド

稲葉真理 准教授
 「企業((株)リコー)を辞めてまで、再び東京大学の門を叩いたのは、落とし物を探しに戻ったのですか」。「そうではなく、仕事で新しく見つけたモノを自分の中で体系づけるためでした」と稲葉准教授。「基礎的なことを勉強したくなったから」という勉学の虫が殻を破り、創造情報学専攻の准教授として、世界を一周する超長距離ネットワークを使ったデータ転送で世界最速記録を更新し、世界一速いコンピューター開発でも見通しをつけるなど、“世界一”に導く立役者の一人として活躍中だ。出身は建築。なのに、情報科学というきわめて競争の激しい研究領域で、世界をリードする成果を上げ、新たに人材育成に乗り出している。そのカギとなったのは何だったのか。企業時代の豊富な経験と研究者にとって最大の武器となる好奇心だろう。

建築から情報科学に研究領域の舵を切る

 キャリアを見るとわかりやすい。東大工学部建築学科を卒業後、ある会社を経て(株)リコーに入社。UNIXワークステーションに同社の売り物のOA機器を接続する事業に携わりながら、ソフトウェア開発を担当する。入社試験の面接で「対人関係に難あり」と評された。自分の意思を伝えるのが得意でなかったという、いまではとても想像すらできない様子を読み取られてしまったのだが、企画、営業、カタログ撮影など、開発から商品化につながるあらゆるジャンルの仕事をこなした。「建築はコンセプトが命。学生時代にこの感覚を叩き込まれたのが結果的に役に立った。しかし、ちょっと基礎的な情報科学の話になると、人はわかっているのに、自分はわからないのがくやしかった」。4年後の1991年10月、理学部のキャンパスに学生姿の稲葉さんがあった。

稲葉真理 准教授
 そして、10年後の2002年、10Gbpsの光通信技術を用いた国内の研究用インターネット『スーパーSINET』の運用が始まる。それまで、大量のデータを扱う研究者たちは、実験や観測データを磁気テープに記録して送っていた。高速ネットワークが敷設されると、高効率でデータ転送を行うことが可能になる。この要請に応えて、稲葉准教授は大規模データを共有する基盤整備を目指し、平木敬教授を代表とする『Data Reservoirプロジェクト』の立ち上げに奔走する。「宝くじを買うと思って、この計画に協力を」と宇宙・天文・高エネルギー・気象といった世界的な理学系研究者を口説き落とす役回りを演じた。組み上げたシステムを使って、東大―阪大―京大―東北大間を1Gbpsネットワークで結ぶ日本半周のデータ転送実験に成功した。この技術が世界に通用するかどうかを確かめるため、スーパーコンピューティングに関する世界最大級の国際会議「SC」のバンド幅チャレンジ、そして、Internet 2 Land Speed Recordに挑戦の場を移していった。

SC03の実験(32台対向で、日米1往復半データ転送実験)組み立てが終わり、マシンの設定をしているところ
SC03の実験(32台対向で、日米1往復半データ転送実験)
組み立てが終わり、マシンの設定をしているところ
 2002年のSC02で東大―ボルチモア間を622Mbpsボトルネックの95% を埋めて最高効率賞を受賞。SC03では回線を束ねて構築した8.2Gbpsネットワークを使って最高バンド幅・距離積 & ネットワークテクノロジー賞を、SC04 では 10Gbps の回線を1台対向で75% 埋め、シングルストリーム最高バンド幅・距離積賞を受賞した。そして、SC04 から2006年12月までの間に、Land Speed Record 世界記録 を10回塗り替え、全クラスで速度記録を更新するという偉業を成し遂げた。

 将来、このネットワーク上で天文学や生命科学などのシミュレーションを行うのに使う計算エンジンが、世界一速い計算能力を目指した『GRAPE−DR』。2008年度に浮動小数点演算をペタ(1000兆倍)オーダーで処理するスーパーコンピューターを開発する計画で、システムソフトウェア、アプリケーションソフトウェア開発のとりまとめが稲葉准教授の仕事。1チップを載せたプロトタイプボードの動作テストに入ったところだが、「米国IBMなどがペタフロップスコンピューターの開発を進めている。でも、私たちが世界最初にペタフロップスの世界に切り込みたい」と言った表情がグッと引き締まった。

産業界が求める創造的人材育成に賭ける

 もうひとつ、日本で立ち遅れていると指摘されてきた基盤ソフトウェア。これを創造する目的で、『戦略ソフトウェア創造人材育成プログラム』に参画し、その立ち上げから教育まで一貫して実施した。企画力、判断力があって、最終的にキチンとモノとして形にできる創造的な人材が必要なことを、産業界をみて、多くの部署の仕事を体験したからこそ感じ取ることができ、実行できたのだ。2002年から5年間推進したこのプログラムが核ともなって、情報理工学系研究科の6番目の専攻として、『創造情報学』が2005年4月に誕生した。産みの親の一人でもある。

PC720台をつないで将棋に挑戦(助手、学生さん総出で実験後の撤収作業)
PC720台をつないで将棋に挑戦
(助手、学生さん総出で実験後の撤収作業)
 このプログラム進行中に、こんなエピソードがあった。情報理工の学生にPC720台を貸与することになり、配る前に720台をつないで分散協調計算実験を行う話が持ち上がった。計算したのは、なんと将棋の解。720台もつなぐのだから、1台よりはずっと早く解を探せるだろうという見通しだった。その目論見は脆くも崩れたが、「戦略ソフトウェアの創造プログラムが総力を挙げて楽しく大きな実験を行った。ともかく全部が動いてよかった」―仕掛け人・稲葉准教授の感想である。

 この次の研究はと問うと、「うふふっ」と笑みをこぼしながら、芯を外したものの、実はすでに別の大きなプロジェクトが動いていて、その一部を任されている。東京工業大学、国立情報学研究所と企業の協力を得て、2006年から4年計画で展開中の『先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム』では、基礎力があり、かつ時代をみながらソフトウェア開発ができる技術創造人材、開発設計ができる人材の育成を目指している。

 「個人的な興味なら、植物のモデル化研究をやりたいですね。人間や動物の体の細胞は死ぬと吸収されるけれど、植物は減らないんですって。おもしろいと思いませんか」。好奇心の旺盛な研究者である。

稲葉准教授



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