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 2007/05/01
電力や信号の伝送に第3の方式を提案
システム情報学専攻 篠田裕之 准教授

素材の表面に高速センサーネットワークを形成
情報家電、RFIDタグ、LANなどの接続に威力

篠田裕之 准教授
 「この布シートを見てください。導電性の繊維を編んだものです。柔らかいでしょう」。何の変哲もない普通のシートにしか見えないが、中には思いもかけない仕掛けがしてある。それが新しい通信を実現するほか、人工皮膚にもつながる可能性を秘めているのだ。産みの親は、システム情報学専攻の篠田准教授。「多くの人が共通して困っている課題をセンサーで解決したい。それが私のライフワーク」という。その答えの1つがこの布シートの中に隠されている。

導電性の素材の中に秘密の仕掛け

 『2次元通信』―篠田准教授が初めて打ち出した通信の概念である。「それは…」とピンとこない人のために、まず通訳をしよう。家庭やオフィスで電気製品をコンセントを通して電源とつないで行うのを1次元通信、配線せずに無線で飛ばして行うのを3次元通信と呼ぶと、2次元通信は、ちょうど中間。先の布シートは2次元通信を実現する素材となるもので、通信方法はとてもユニークだ。

 シートは導電層+絶縁層+導電層の3層構造のみで、非常にシンプル。シートの一端から2.4GHzのマイクロ波の電力を流すと、電気はシート面内に閉じ込められる。この状態のシート面に特殊なコネクターを装着した電気製品を置くと、電気が繊維の表面を受け渡されて伝播し、製品に供給される。また、2次元の面内では空間中の電波とは干渉しない信号空間ができるので、シートに多数のセンサーを取り付ければ、それらは無線と混信することなく高速でネットワーク化される。つまり、シートに1ヵ所だけ電源と接続しておけば、面内ではセンサーを動作させる電力の供給と信号の伝送が可能になるのである。

 シートの価格は安く、2.4GHzの電磁波は無線LANや電子レンジに使われている一般的なもので、そのデバイスも高価ではない。ネックと言えばシートの広さに制約があること。せいぜいオフィスの1部屋くらいのスペースしか使えないが、この範囲なら、机、床、衣服などの表面に高速、高密度のネットワークを低コストで形成できる。しかも、応用は極めて広い。LAN、RFIDタグ、情報家電、コンピューター周辺機器の接続など多様な分野が考えられる。「家庭内で床に多数の接触センサーを貼っておくと、侵入者の検知が確実にできるし、壁紙に埋め込んでおけば、部屋の温度制御をこれまで以上に正確に行えるようになります」。センサーはクルマを代表例にふんだんに使われているが、その用途が多くの分野に波及、拡大していくのはまちがいない。問題は多くのセンサー群をどのようにつないで、電力を供給するかだが、2次元通信はこの課題を解決する有力な技術なのだ。信号を閉じ込めておけるので、無線LANで問題になる情報漏洩を防ぐことができる。


通信シートの電磁波を上からみた様子 二次元通信で卓上の情報機器を接続
通信シートの電磁波を上からみた様子 二次元通信で卓上の情報機器を接続

近接コネクタから通信層へ放出される電磁波 通信層内を伝播する電磁波(断面図)
近接コネクタから
通信層へ放出される電磁波
通信層内を伝播する電磁波
(断面図)

 斬新な2次元通信のアイデアは、唐突に生まれたものではない。篠田准教授は当初、無線の触覚センサーで通信を考えた。柔らかい人工皮膚素材の中で触覚を感じる莫大な数のセンサー1つひとつに配線することが難しかったからだ。人工皮膚を引っ張ると、すぐに配線が切れてしまう。そこで、触覚のセンサーを携帯電話のように無線にしてしまうことを考えたが、センサーを動作させるための消費電力が多く、届いてほしくないところにも電波が飛び、混信という災いをもたらすことが問題だった。それを解決するために、電力や信号を面内に閉じ込める方式を編み出したのである。

筋電計測を第1弾に、人工皮膚へ展開

篠田裕之 准教授
 篠田准教授のグループは、この技術をもとに、リストバンド型筋電位計測デバイスを試作した。全身の表面に現れている筋電信号を、肌着のように快適に装着して1日中でも楽に計測することを目指した筋電サポーターと呼べるもので、情報インタフェースとして役立てることを狙いにしている。具体的には、柔軟な布シートの中の繊維層に多数のセンサーを配置した微小計測ユニットをつくり、腕に巻いて高解像度の2次元筋電パターンを検出するのだ。人が指を動かすと、その指の動きに対応した筋肉の筋電信号が現れる。これから指の運動や力の状態がわかる。「その応用ですか。携帯電話の形を劇的に変えることだって…」。

 携帯電話のディスプレーの厚さは1mmを切るほど薄くなり、小型化も限界にくるほど小さくなったが、ある大きさ以下には小さくできない。0から9までの数字のボタンや機能ボタンが15個あるからだ。ところが、人差し指や中指などの筋電の動きを計測したデータを使えば、机の上などに指でトントントンとキーを打つように動かすだけで電話番号を入力できる。ディスプレーと筋電サポーターを組み合わせると、ボタンのない文字どおり“私だけの”携帯電話に早や変わりだ。「筋電信号は、実際に指が動き出すよりも0.1秒程度早く発生するので、動きを予測することもできるのです」。

 2次元通信は、回路の実装技術としても注目される。基板に集積するLSIの数が増えるほど、抵抗の低い配線材料で相互に結ぶ必要があるが、今回の技術を応用すると、LSIをシート面内に配置しさえすれば、電気的に接続したり配線したりすることなく、電力と処理情報を伝送することが可能だ。しかし、篠田准教授が目指している本命(キラーアプリケーション)は人工皮膚、中でもロボットへの応用だ。それに結びつける突破口が筋電サポーターという位置づけである。

 篠田研究室は「私たちは、論文のための研究はしない」、「研究室は1つのベンチャー企業」をモットーに、最終的には社会に役に立つ実用技術として完成させることに目標を置いている。産業・社会に成果の応用を志向している篠田研究室にとって、2次元通信技術は有望なダイヤだ。ダイヤの輝きを印象づけるために、成功例を示すことと、人工皮膚と並ぶキラーアプリケーションの探索を進める。「この2つの作戦こそ、私たちのミッション」と篠田准教授は明確に答えた。

篠田准教授
安藤・篠田研究室



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